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  教育領域研究会のご報告  
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世話人
幹事

北田和美
生田香明
津田忠雄

 

 平成20年度大阪体育学会教育領域研究会は、「新学習指導要領にどう対応するか」というテーマを掲げ、今後の学校体育のあり方を多角的に討議するためにシンポジュウムを下記の要領で開催しました。

日時:平成21年2月21日(土) 午後1時45分〜4時30分
場所:近畿大学会館

テーマ:『新学習指導要領にどう対応するか』
  シンポジュウム:
 話題提供(1) 「学習指導要領は、どう新しく変わるのか?!」
                         北田和美(大阪女子短期大学) 
 話題提供(2) 「中学校現場からみた新学習指導要領の課題」
                         中西由香(大阪市立新北野中学校)
                         北川延尚(大阪市立天満中学校)
 話題提供(3) 「新学習指導要領にみられる「ボール運動」の再考」
                         後藤幸弘(兵庫教育大学)
司会:生田香明(大阪青山短期大学)
話題提供者  後藤幸弘(兵庫教育大学)
 生田氏の「体育は学校教育の中で、もっとも重要でかつ必要な教科であり、生徒に対して果たす役割も計り知れない」という言葉でシンポは始まり、まずこのシンポの企画者である北田氏から、新学習指導要領について、(1)小中学校の新学習指導要領は40年ぶりに授業時間や学習量を増加、(2)国際学力比較調査などを背景に10年前のゆとり路線から大きく舵を切った形、(3)前の指導要領の検証は不十分、総合学習が不調だった理由も解明する必要あり、といった点から、その概要と抱える問題点を指摘された。
具体的には、中学校の授業時間が現行のままでありながらも1・2年生はすべての領域が必修になる(武道とダンスも)ことから、以下のことについての指摘があった。
領域の取り上げ方や評価基準
H22入学生は3年生で完全移行のため、入学時より配慮必要
H21からは年間指導計画や単元計画検討
施設設備の計画的な準備、補充、点検
実技講習会などへの積極的参加など指導力の向上
外部指導者の活用の検討
予算措置と指導力の充実のための国からの支援は?!
 次に、中学校の現場で教育、指導されている中西氏、北川氏からは、新学習指導要領を現場でより効果的に展開するにあたり、教員数や教員のスポーツ種目の経験など、各教員にかかる負担や問題点を提案された。視点を変えれば現場での模索する苦悩といった思いを語られ、参加者の共感を誘った。
 また、後藤氏は、『新学習指導要領にみられる「ボール運動」の再考』というテーマで、長期にわたる実践研究から新たな視点としてスポーツと教育(体育)の可能性を提案された。「必要充足の運動」という捉え方+「欲求充足の運動」へ運動の爽快感や爽やかさを味わわせるという視点から、ゲームパフォーマンスを高めることを大きな目標とし、戦術学習の重視の中での、off the ball(ボールを持たない動き)への関心といった視点から、「4−4−4制の原則」「マトを突く」「ズレを突く」「ズレを創り出し突く」など、興味深いキーワードを取り上げ、提案された。
 討議は、フロアーから、伊藤章(大阪体育大学)、徳原 康彦(大阪国際大学)先生らの活発なご意見をいただきながら、現場でも役立つ具体的でかつ有意義な指導論が論議された。
  以下、参加者の感想を紹介させていただく。

○新学習指導要領の動きや課題が見え、頭の中がすっきり整理できたと思います。いい機会をいただきました。日々、学校の中の経験しかありませんが、もう一度先を見据えた体育のあり方をしなければならないと反省させられた。反省ですが、基本の動きを重視していなかった。小学校の基本の動きがなくなることに驚いた。大学生の運動能力の低下に驚いていましたが、小・中の基礎に大きな土台があることを再度考えさせられました。

○新学習要領がとてもやりにくいなどの意見が多かったが、あくまでも基本であり、内容が抜け落ちてはいけないが、発展的に考えればいいと思っている。武道は、柔・剣・相撲のみでなく、N先生の考えのように合気道やなぎなたなども指導できる。現在全国体力テストに関わっていますが、例えば、大阪の子どもは、反復横とび・20mシャトルランの平均値が全国と比べて低いのですが、このことを現場へストレートに伝えるとこの2種目の記録を向上させるためだけの方法を考え、授業で実施する先生が多いと思います。そうでなくて、敏捷性・全身持久力を高める方法を考えてもらいたい。種目の指導ではなくて、将来的に子どもが運動することを[好き][得意]と思うようにさせてあげてほしいと考えている。ネックは相対評価だと思う。10がよくて、1が悪いという考え方だと思います。何とか変えたい!

○現場の悩みや問題点はどこも同じです。K先生がおっしゃったように専門に研究している先生方と現場の問題を話しあう機会をより広げ、教育現場でもよりよい方法を探っていく必要があるように思いました。自分が専門にやってきた種目以外のものは、それこそ観点も素人なので、その種目専門の方々のお話もたくさん聞かせていただく機会がもてればという気がしています。自己流にいろいろと考えて授業を展開してきたつもりですが、とても勉強になりました。

○中学校教育者関係だけの意見交換会では絶対得られない情報であり、お話を聞かせていただけて本当に有意義な時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました!
改めてもう一度体育指導で何を生徒に伝えなければいけないのかを勉強しなおしたいと感じました。

○今回このような会に参加させていただいて現場の教員と大学で研究されている先生方の意見交換の場というものが大切だということを感じました。もっとこういう場を持っていただきたいです。いろいろな種目の先生方の専門のお話や情報、資料というものを提供していただけたら、現場に活かしていきたいです。
   以上のように、研究会は有意義なものであった。さらに、現場との関わり合いの必要性を痛感するものであった。また、現場の先生方からは、大学で研究されているさまざまな教科教育方法、指導方法を具体的に学ぶ機会や場がほしいとの要望が多数寄せられ、両者の頻繁な交流がともかく最優先されるべきだと感じた。
   最後に、北田氏から、『この新しい形式の研究会を始めて3年になる。石の上にも3年というが、どのように展開していけばよいのか、担当者は、手探りで迷いながらも歩んできた。当初、年内に2回の研究会を開きたいと考えていたが、結果的には1回しか開くことができなかった。しかし、1回ではあったが、「研究実践と教育現場のつながりと交流を深める、このような研究会が必要である!」ということを参加者一同が実感していただけた会となったことがうれしい。これからさらに輪が広がっていくことを期待し、活動していきたい。会員の皆様のご意見・ご要望をお待ちしております。』と締めくくった。(文責 津田忠雄)
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