講演会の案内
 −人間の骨格筋における筋腱相互作用とスポーツパフォーマンスの関係−

 

ご案内

 この度,早稲田大学スポーツ科学学術員教授の川上泰雄先生から標記題目の講演をいただくことになりました。川上先生は、運動中の筋の収縮要素と腱の相互作用について、福永哲夫先生とともに世界に先駆ける先進的な論文を多数発表されております。本講演ではスポーツ活動において、筋だけではなく、いかに腱が重要な働きをしているのかについてお話していただけることと思います。大阪体育学会員のみならず、運動指導者、ドクター、PTなど多くの方々のご参加を願っております。

大阪体育学会会長  後藤幸弘

 

◇講演者:川上 泰雄 先生
◇日時:2007年11月10日(土)午後4時 〜 5時30分
◇会場:大阪体育大学アネックス 
※地図はこちらをご覧ください。
◇参加費:無料

◇講演要旨

 骨格筋は、形状面からも機能面からも、筋腱複合体(筋束+腱組織)として考えるべきである。腱組織は収縮によって伸長され、このとき筋束は短縮する(筋腱相互作用)。筋腱複合体の動態の生体計測を通 じて、筋腱相互作用が骨格筋の力・パワー発揮において非常に重要な役割を演じることが明らかになってきた。
 歩行において、立脚期中に腓腹筋の筋腱複合体は徐々に伸長され、蹴り出し直前に短縮して足関節を底屈させる。立脚期の筋腱複合体の伸長相において筋束長は一定であり、この間にアキレス腱が伸長する。伸長されたアキレス腱は、蹴り出し時に筋束とともに短縮し、弾性エネルギーを貯蔵、放出して歩行の推進パワーに寄与する。同様のことが足関節のみを用いたジャンプ動作にも認められ、ジャンプに先行する反動動作中、腓腹筋の筋束は等尺性収縮を行う。このときにアキレス腱は伸長され、ジャンプ動作の後半において両者が短縮する。筋束は力発揮および消費エネルギーの点で有利な収縮を行い、同時にアキレス腱の弾性エネルギーの放出による短縮速度を得ることで、大きなパワーを達成する。
 腱組織の粘弾性には個人差が存在し、スポーツパフォーマンスとの関連性が指摘されている。また、最適な筋腱相互作用を引き出すための適切な筋活動もパフォーマンス向上にとって重要である。本講演ではこうした点について、われわれの実験結果 を中心にお話しさせていただく。

 

川上 泰雄 先生
(かわかみ やすお)

略歴
1965年神奈川県生まれ
1988年東京大学卒業、同大学院修士課程修了、博士後期課程中退
1995年博士(教育学)学位論文「人間の骨格筋の形状と筋活動能力」
1991年4月 東京大学教養学部助手
1999年12月 東京大学大学院生命環境科学系助教授
2003年4月 早稲田大学スポーツ科学部助教授 
2005年4月 早稲田大学スポーツ科学学術院(スポーツ科学部・大学院スポーツ科学研究科)教授

1995年3月〜12月 文部省在外研究員 カナダ・マクマスター大学
1998年8月〜10月 客員研究員 アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校
1999年7月〜8月 学術振興会派遣研究員 カナダ・カルガリー大学

専門はバイオメカニクス、運動生理学、トレーニング科学
著書に「筋の科学事典」(共著、朝倉書店)など


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